【完】キミさえいれば、なにもいらない。

そんなふうに言われたら、ひどく困惑してしまう。


陸斗先輩が私のことを気に入ってるだなんて、そんなことあるわけがないのに。


だって、私は一度彼に振られてるんだから。


でも、そんなこと彼方くんには言えないし……。


そのまま彼も黙り込んでしまい、間に沈黙が流れて。


一気に気まずいムードになって、どうしようと思いながらオロオロしていたら、彼方くんが急にボソッと呟いた。


「……って、ごめん。何言ってんだろ、俺」


ドキッとして顔を上げると、彼は口元に手を当て、少し恥ずかしそうに言う。


「悪い。今のは気にしないで。ただ、俺が勝手にヤキモチ妬いてただけだから」


「えっ……」


ヤキモチ?


「あの先輩、雪菜と付き合い長いみたいだし、俺よりずっと雪菜のこといろいろ知ってるみたいだったから、なんか悔しくて……。ごめんな」


彼方くんの口から放たれた思いがけないセリフに、心臓がドキッと跳ねる。


ウソ……。まさか、彼方くんが陸斗先輩にヤキモチを妬いたりするなんて。