【完】キミさえいれば、なにもいらない。

だけどよく見ると、目が笑っていないような気がして。


なんとなく二人の間に不穏な空気を感じる。


『いつも』っていうのも、ちょっと語弊があるし。


どうしよう。彼方くんと一緒にいる時に陸斗先輩と顔を合わせるの、やっぱり嫌だな……。


「あ、そういえばさー、そろそろ学祭の時期だろ?俺ら今年もバンドでステージ出るから、絶対見に来いよな」


そんな中、笑顔でペラペラと喋り続けるお兄ちゃん。


「クラスの奴らにも宣伝しとけよ~。ちなみに今日その打ち合わせで陸斗たちがウチに来る予定だから、よろしく」


「えっ!」


さらには思いがけないことを言われて、ギョッとする。


ウソッ。陸斗先輩がうちに来るの?


「そうそう。だからもし宿題とかわかんないところあったら、俺が教えてやるから言えよ」


陸斗先輩がそう言って、私の肩にポンと手を乗せる。


「あとで会えるの、楽しみにしてるから」


「……っ」


「そういうことだから。じゃあなー!」


そのまま二人はその場を去っていったけれど、それを聞いて、私は急に放課後が憂鬱に思えてきてしまった。


しかも、「会えるの楽しみ」だなんて、なにそれ。本気でそんなこと思ってるのかな?