【完】キミさえいれば、なにもいらない。

「雪菜、こっち!」


彼方くんが手を振りながら笑顔で声をかけてくる。


私はたらこパスタの乗ったプレートを手に持ちながら、彼の座るテーブルまで歩いて行った。


今日のお昼は彼方くんに誘われて、学食で一緒に食べることになったんだ。


いつも彼は友達グループと一緒に食べているんだけど、最近こんなふうに誘われることが多くて。


私も普段は璃子と二人で食べているんだけど、彼方くんと私の仲を応援してくれている彼女は、彼方くんに誘われたと知るとニヤニヤしながら「行ってらっしゃい」と嬉しそうに送り出してくれた。


彼方くんとテーブルを挟んで向かい合わせに座ると、彼が声をかけてくる。


「雪菜はパスタにしたんだ?」


「うん。彼方くんはAランチ?」


「そうだよ。だってデザートにプリンついてるし」


そんなふうに言う彼を見て、思わずクスッと笑みがこぼれる。


「ふっ、プリン食べたくて選んだの?」


「うん」


彼方くんはたまにこんなふうに子供っぽいところがあって、そこがなんだか可愛い。


かと思えば、意外に男らしくて頼りになる一面もあるし。知れば知るほど不思議な魅力のある人だ。