時刻も午後九時をまわり、だんだんと人けがひいていく中、私と彼方くんは並んで手をつなぎながら、駅までの道を歩いて帰っていた。


お祭りも、そろそろ終わりの時間。大通りに並んだ屋台からもだんだんと明かりが消え、店じまいをしている様子がチラホラ見える。


なんだかあっという間だったな……。


彼方くんとの初めてのデートは、思いのほかとても楽しくて。


途中、ナンパされたり陸斗先輩に遭遇するなんていうアクシデントもあったけれど、そんなことも忘れてしまいそうなくらいに今の私は胸がいっぱいで。このまま家に帰ってしまうのが寂しいくらいだった。


だけど、もうすぐ今日は終わってしまう。


駅前の広場まで到着すると、彼方くんが立ち止まって、そっと私の手を離した。


「今日はありがとな。祭り、楽しめた?」


向かい合ってそう聞かれて、コクリと頷く私。


「うん、楽しかったよ。こちらこそ、誘ってくれてありがとう」


笑顔でお礼を言うと、彼方くんは嬉しそうな顔でニコッと笑ってくれた。


「よかった。俺もすげぇ楽しかったよ。雪菜と一緒に過ごせて嬉しかった」


その優しい笑顔を見ていたら、なんだかとても名残惜しい気持ちになってしまう。


私ったらほんとに、どうしちゃったのかな。


「それじゃ、またね」