「一年生の時にね、初めて好きな人ができたの……。その人、最初はすごく優しくて、誠実な人だと思ってた。でも、実際はそうじゃなかった。裏切られるような出来事があって……。それで私、男の人を信じられなくなっちゃったの」


思い出すと、今でも辛くなる。もちろんその相手がさっきの陸斗先輩だとは言えなかったけれど。


それでも、本当はずっと、誰かに話したかった。


「それ以来、恋愛をしたいって思えなくなって……。また昔みたいな思いをするのが怖いの」


「……そうだったんだ」


彼方くんは私の話を聞いて、少し苦しそうな顔をしてたけど、それでも静かに黙って聞いてくれた。


「雪菜も、色々あったんだな」


「うん……」


「でも、世の中そんな男ばっかりじゃないと思うよ。裏切らない奴だって、ちゃんといるから」


彼方くんがそう言って、自分を指差してみせる。


「え?」


「ここにいる」


「……っ」


正直、どんなリアクションをしていいのかわからなかったけれど、彼方くんの表情は真剣だった。


「俺は雪菜のこと、絶対傷付けたりしないし、裏切ったりなんかしないよ」