何ごとかと思った私は、驚きのあまり大声で叫んでしまった。


すると、目の前のその人は、すぐに片手でお面をはがすとクスクス笑ってみせる。


「あはは、ビックリした?」


誰かと思えばその正体はなんと、彼方くんで。もう片方の手にはジュースのペットボトルを二本持っている。


「……び、ビックリしたよ。誰かと思った。どうしたの?そのお面」


私が問いかけたら、彼はイタズラっぽく笑いながら、私の隣に腰掛けた。


「そこの屋台で売ってたんだ。雪菜のこと驚かせようと思って」


「ウソ。それでわざわざ買ったの?」


「うん。だってなんか雪菜、ちょっと元気なさそうだったからさ、元気づけようと思って」


そんなふうに言われて、ハッとする。


やだ、やっぱり彼方くん、さっきから私が元気ないことに気付いてたんだ。


それでわざわざこんなふうに励まそうとしてくれて……。


思わず胸の奥がじわっと熱くなる。


どうしてそんなに優しいんだろう。


「あ、ありがとう」


私が彼方くんをまっすぐ見上げながら礼を言ったら、彼は目を合わせたままニコッと微笑んでくれた。


その笑顔を見て、なんだか心が洗われたような気分になる。


ほんとに元気が湧いてくるようで。


いつもそう。彼方くんの笑顔を見ていると、不思議と自分も笑顔になれるんだ。


彼の優しさのおかげで、さっきまでのモヤモヤした気持ちが、一気に吹き飛んでいったような気がした。