「いや、ちょっと待て!それなんか間違ってる!違うから!」


「何がだよっ」


「俺じゃねぇから!それ!」


「んなわけねぇだろうが!」


「第一、俺の名前は……」


だけどそこで一ノ瀬くんが言い終える前に、男は右手を振り上げると、


「うるせぇ!!」


そのまま勢いよく彼に殴りかかった。


――バキッ!


「うわっ!」


骨と骨がぶつかり合うような鈍い音と共に、一ノ瀬くんが再び地面に倒れこむ。


やだ、ウソッ……!


その様子を見ていた私は、なんだかとても申し訳ないような、いたたまれない気持ちになった。


ど、どうしよう……。


一ノ瀬くんが殴られちゃった。


彼は、何もしていないはずなのに。うちのお兄ちゃんのせいで……。