まるで彼方くんのことを信用するなとでもいうような言い方をされて、思わず顔をしかめてしまった。


なんのつもりなんだろう、いきなり。


たしかに彼方くんはチャラ男のイメージがあるのかもしれないけれど、そんなこと、陸斗先輩には言われたくない。


今さら兄のように振舞わないでほしい。私のことなんて放っておいてほしいのに。


陸斗先輩が何を考えているのか、まるでわからない。


そしたら次の瞬間、彼方くんが陸斗先輩から身を引きはがすように、私の肩をサッと抱き寄せた。


そして、先輩の顔をじっと見上げながら。


「ご心配ありがとうございます。でも俺、雪菜のこと笑わせることはあっても、泣かせたりは絶対にしないんで」


にこやかに、でもハッキリとそう告げる彼。


そんな彼の行動に、また心臓がドキッと跳ねる。


陸斗先輩はそんな彼を見て、一瞬面食らったような顔をする。


「それじゃ、そろそろ失礼しますね」


彼方くんはそう言って、再び私の手をぎゅっと握る。


「行こう、雪菜」


「あ、うん……」