最悪だ……。どうしてこんなところで会っちゃうんだろう。


心が一気にモヤモヤしたもので覆われていく。


陸斗先輩はなぜか、私を見て少し驚いている様子。


「いやぁ、偶然だな。ビックリしたよ。雪菜がまさか、男とデートしてるなんてさ」


そう言う先輩はなぜか一人でいて、彼女と一緒ではないみたいだった。


「もしかして、彼氏?」


彼方くんと一緒にいるのを見て、興味津々な様子で問いかけてくる先輩に対し、目を伏せながら答える私。


「え、いや、そういうのじゃ……」


どうしてそういうことをいちいち聞いてくるんだろう。


今さら彼と何を話していいのかわからない。


私が暗い顔をしてうつむいていたら、ただならぬ空気を察したのか、そこで彼方くんがすかさず陸斗先輩に笑顔で声をかけた。


「いや、今日は俺が雪菜を誘ったんです」


「え?」


「先輩、去年学際に遥先輩とバンドで出てましたよね。キーボードで。すげーカッコよかったっすよ」


なんて、特に面識のない先輩相手なのに、持ち前のコミュ力の高さを発揮する彼を見て、思わず感心してしまう。


さすがだなぁ。


そんな彼を見て、フフッと不敵な笑みを浮かべる陸斗先輩。