【完】キミさえいれば、なにもいらない。

「手、繋いでもいい?」


彼方くんが、上目遣いで問いかけてくる。


こんな状況でそんなふうに言われたら、断れない。


「……う、うん」


観念したように私が頷いたら、次の瞬間彼の手が、私の手を優しく包み込んだ。


再びドキンと脈を打つ心臓。


どうしよう。すごく恥ずかしい。手を繋ぐのが、こんなにも照れるだなんて思わなかった。


でもこんなの、彼方くんはきっと慣れてるから平気なんだろうな。


そう思って、隣にいる彼をそっと見上げてみる。


そしたらなんと、平気だと思っていた彼の顔が驚くほど真っ赤になっていて。よく見ると耳まで赤くなっていたので、意外すぎてビックリしてしまった。


ウソ……。どうしてそんなに照れてるんだろう。


彼方くんが、私の手を握りながらボソッと呟く。


「俺、もう、今日が永遠に終わらなかったらいいのにって思ってる」


「えっ……」


「夢見てるみたいだ。このまま雪菜の手、離したくない」


そんなふうに言われたら、ますます照れくさくてたまらない。


彼方くんはやっぱり、言うことが大げさなんだ。


だけど、決してそれが嘘に聞こえるわけではなくて。


心のどこかでそんな彼の言葉を、嬉しいと思っている自分がいた。


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