【完】キミさえいれば、なにもいらない。

突然思いがけないことを言われてドキッとした。


ちょっと待って。どうしたんだろう、急に……。


「だって、またはぐれたら怖いし、さっきみたいに雪菜のこと、他の男に狙われたら嫌だから。ただでさえ雪菜、こんなかわいいカッコしてんのに」


彼方くんがそう言って、私の浴衣に目をやる。


「べ、べつにそんな、大したことないよっ……」


照れくさくて思わず謙遜したら、彼方くんが真顔で言い返してきた。


「何言ってんだよ。そんなわけないだろ。どこをどう見たって、雪菜が一番可愛い」


「……なっ!何言ってるの。褒めすぎだよっ……」


本当にもう、この人は、どうして私なんかのことを、こんなにもベタ褒めしてくるんだろう。


真っ赤な顔でうろたえていたら、彼方くんが「本心だよ」と言って、私の顔をじっと覗き込む。


「ただでさえ俺、今日会った時からずっとドキドキしっぱなしなのに。他の男までドキドキさせないでよ」


「……っ」


少し悔しそうな表情でそんなふうに言われて、私のほうが逆にドキドキしてしまった。


なんだかもう、恥ずかしいのか嬉しいのかよくわからない。


なんなの、この気持ち……。