【完】キミさえいれば、なにもいらない。

「雪菜っ」


期末テストを二日後に控えたある日の放課後のこと。私が帰りの支度をしていたら、突然彼方くんが現れて、声をかけてきた。


「悪いけど、このあとちょっとだけ時間ある?数学で分かんないとこあるから、教えてほしいんだけど」


彼はここ最近勉強に打ち込んでいたのか、うちの教室を尋ねてくることもなかったから、話すのは数日ぶり。


「あ、うん。べつにいいよ」


私が頷いたら、彼方くんはホッとしたように笑った。


「マジで。ありがと」


だけど、その顔はなんだか少し疲れているようで。


よく見ると、目元にクマができているし、もしかして、寝不足なのかも、なんて思う。


夜遅くまで勉強頑張ってたのかな?


「ねぇ、彼方くん」


「ん?」


「夜、ちゃんと寝てる?」


思わず心配になってたずねてみたら、彼は一瞬驚いた顔をしていたけれど、すぐにハハッと笑いながら答えた。


「えっ、寝てるよ、もちろん。俺、よく寝るタイプだから」


「ほんとに?」


「うん、ほんとだって」


そうは見えないんだけどな。