【完】キミさえいれば、なにもいらない。

それにしても、言葉通りほんとに頑張ってるんだ。こんなふうに、お昼休みまで勉強してるなんて思わなかったな。


するとそこで、彼方くんの元に鈴森さんがササッと駆け寄ってきて、彼に声をかけるのが見えた。


「ねぇ、彼方ー、ちょっとは休憩したら?なんで今回はそんなに必死で勉強してるわけー?」


高くてよく通る声は、こちらまで聞こえてくる。


「彼方ってば、聞いてる?」


だけど、イヤホンをつけているせいか、その声に彼方くんは気が付いていないみたいで。途端にムッとした顔になる彼女。


「もう、彼方ったら~!」


だけどそこで鈴森さんが彼に手を伸ばそうとした瞬間、すぐ後ろから彼女の腕を背の高い男の子がギュッと掴んだ。


「おい、美空」


彼は確か、彼方くんといつも一緒にいる友達の一人で、黒澤くんとかいう人だ。


「せっかく彼方が真面目に頑張ってんだから邪魔すんなよ。お前もテストヤバいんだから勉強しろ」


黒澤くんに注意された鈴森さんは、頬を膨らませ言い返す。