夏祭りというタイムリーなワードに、ドキッと心臓が跳ねる。


「い、いないよ。そんな人……」


そんなふうに答えながらも、頭の中では彼方くんのことを思い浮かべてしまった私。


変なの。まるで彼のことを意識してるみたいだ。


「なんだよー、じゃあ、俺の友達でも紹介してやろっかー?」


お兄ちゃんが半分ふざけたように笑いながら聞いてくる。


「えっ、嫌だ。お兄ちゃんの友達だけは嫌っ!」


私はもちろん全力で拒否した。


「なんでだよ~」


「だって、みんなチャラいんだもん」


「そんなことねぇだろ~。チャラくない奴だっているぜ?だってほら、陸斗なんか、爽やかイケメンだぞ……って、あいつは彼女持ちか」


何気なく出てきた陸斗先輩の名前に、無意識に心が反応する。


だけど、なんだろう。


彼の名前を聞いても、前ほどは苦しく思わない。


少し前までは、名前を聞くのもすごく辛かったのに。


するとお兄ちゃんが、何か思い出したように呟く。


「あーでも、陸斗の奴、最近梓とうまくいってないっぽいんだよね~」


「えっ、そうなの?」