彼方くんのほうを振り向くと、彼は口を抑えたまま、うっとりした表情でつぶやく。


「どうしよう、俺。雪菜の手料理食べられるとか、幸せすぎるんだけど」


「えっ……」


「ありがと。これで次の体育も頑張れそう」


はにかんだように笑いながらそう言われて、なんだか照れくさくてたまらない気持ちになる。


ほんとに彼方くんは、言うことがいちいち大げさなんだ。


まさか卵焼きをあげただけで、こんなに喜んでもらえるとは思わなかったな。


だけど、嬉しそうな彼を見ていたら、私まですごく嬉しくなってしまって。


お弁当を手作りしてきてよかったかもしれないなんて、そんなことを思っている自分がそこにいた。


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