「じゃあ、いただきます」


彼方くんは照れたようにそう告げると、そのままぱくっと一口で卵焼きを食べる。


その瞬間、なんだか私のほうまでドキドキしてきてしまった。


私ったらほんと、なにやってるんだろう。


自分で自分の行動がよくわからない。


卵焼きを口にした彼方くんは、急に静かになって、そのまま無言で口を抑える。


その様子を見たら、もしかして口に合わなかったかな、なんて、ちょっと不安になった。


いつもどおり砂糖を入れて甘くしちゃったけど、彼は甘いの好きじゃなかったりして。


だけど数秒後、彼はボソッと一言。


「……えっ、超うまい」


感激したような表情でそう言ってくれたので、少しホッとした。


「ほんと?よかった」


「うん。今まで食べた卵焼きの中で、一番おいしい」


「えぇっ!そんな、大げさだよっ」


「いや、マジで」


さすがにそれは、褒めすぎだと思うんだけどな。