そんな顔でそんなふうに言われたら、自分で食べるよりも、むしろ彼にあげたほうがいいのかな、みたいな気持ちになってくる。


なんだか食べたそうな顔をしてるようにも見えるし。


いやでも、お弁当のおかず分けてあげるなんて、そんなことしたら変かな。


うーん……。


「あの、よかったら、一個食べる?」


あれこれ悩んだあげく、結局声をかける私。


そしたら彼方くんは瞬時に目を大きく見開くと、すごく嬉しそうな顔で。


「マジでっ!いいの?」


「うん。お口に合うかわからないけど……」


そう言って、箸でつまんだ卵焼きをそっと彼方くんの前に差し出したら、彼の顔がなぜかほんのりと赤くなった。


それから私の目をチラッと見ると。


「やばい。雪菜に食べさせてもらえるとか、もう俺、ドキドキしすぎて死にそう」


「えっ!」


言われて初めて、自分が大胆なことをしてしまったことに気が付く。


だけど、いまさらだ。