「彼方くんはお昼、パンだけなの?」


私が尋ねると、コロッケパンを片手にうなずく彼。


「うん。ウチ、親どっちもフルで働いてて忙しいから、昼は基本学食か購買なんだよね」


「そうなんだ。うちの親もそうだよ。だから、たまに自分でお弁当作ってて」


「へぇ、さすがだな。雪菜ってなんか、いい奥さんになりそうだよな~」


「なっ、何言ってるの……っ」


そこで私が卵焼きを箸で取ろうとしたところ、彼方くんが再びお弁当をじっと覗き込んでくる。


「その卵焼き、美味しそう」


「え?」


そう言われて、ふと思い出した。


あれ?そういえば、彼方くんの好きな食べ物って、確か……。


「彼方くん、卵焼き好きなんだっけ?」


「うん、そうだよ。よくわかったな」


「だって、前手紙に書いてあったから……」


私が答えると、嬉しそうに目をキラキラさせる彼。


「えっ、覚えててくれたんだ!そうだよ、俺の大好物」