思いがけず、彼方くんに名前を呼ばれて心臓が飛び跳ねる。


ウソ。やだ、見つかっちゃった。


彼方くんは私を見つけるとすぐ、嬉しそうな顔でこちらに駆け寄ってくる。


そして私をじっと見たかと思うと、不思議そうな表情を浮かべて。


「あれ？一人なの？」


そう尋ねてきたので、私は気まずい顔をしながらも頷いた。


「え、あ……うん。今日はいつも一緒に食べてる友達が風邪で休んでて……」


やっぱり、なんで一人で食べてるんだろうって思うよね。


「そうなんだ。俺ら今、購買寄ってきたところなんだけど……」


「ねぇ彼方、なにしてんのー？早くー！」


そこで急に、向こうから彼を呼ぶ可愛らしい女の子の声がして。


見ると、茶髪のウェーブヘアの小柄な美少女が、彼方くんのほうを見ながら手招きしている。


あの子はたしか、鈴森さんだっけ。


彼方くんとよく一緒にいる女の子で、話したことはないけれど、可愛くて目立つから知っている。