【完】キミさえいれば、なにもいらない。

なにそれ。私のことが好き……?


本気で言ってるの??


私はそんなことをサラッと言えてしまう彼が、理解できなくて。


やっぱり信用できないと思ってしまった。


「……何、言ってるの? からかわないでよっ」


「からかってなんかない」


「ウソッ。だって、いきなりそんなこと言われても、信じられるわけないでしょ。そういうナンパみたいなの、やめて……」


「だから、ナンパじゃねぇよ」


一ノ瀬くんが、再び私の左手に手を重ね、ギュッと握ってくる。


その瞬間ドキッと跳ねる心臓。


「でもっ……」


「じゃあ、はっきり言う」


一ノ瀬くんはそう言うと、手を握りながら、私をまっすぐ見つめる。


いつになく真剣な表情の彼を見ていたら、なんだかドキドキしてくる。


「……」


だけど彼は、そのままなぜか黙り込んでしまい、すぐには何も口にしない。


……あれ?どうしたんだろう。何か言おうとしたんじゃなかったの?