【完】キミさえいれば、なにもいらない。

「お仕事お疲れ様。図書委員さん」


爽やかにそう告げる一ノ瀬くん。


相変わらずな彼にはちょっと呆れてしまうけれど、なんだろう、やっぱりどこか憎めない。


「ま、また来たの?」


私が戸惑いながら問いかけたら、一ノ瀬くんはすぐにうなずいた。


「うん。雪菜に会いたかったから」


そしてどこからかイスを持ってきて、私と向かい合うようにカウンターの前に座る。


そんな彼を見て、つくづく不思議だなと思う。


どうして彼は、私なんかにこうして構うんだろう。


最近毎週のようにここに来てるけど、ただ暇をつぶしにきてるだけなのかな。


友達と帰ったり、遊んだりしないのかな。


次々と疑問がわいてくる。


同時に、今日彼のファンの子たちに言われた言葉をまた思い出した。


『暇つぶしじゃない?からかって遊んでるだけだよ』


『あんな子、どこがいいんだろ』


正直、自分でもよくわからない。


一ノ瀬くんは一体どういうつもりなんだろう。


私のこと、からかってもてあそんでるだけ?


あの子たちが言うように……。