【完】キミさえいれば、なにもいらない。

「それじゃ、そろそろ帰ろうか。またな、雪菜」


陸斗先輩が梓さんの手をサッと取って、私に声をかける。


梓さんもニコニコしながら私に手を振ってくれて。


「またね~」


何とか自分も笑顔で手を振り返したものの、やっぱり胸が苦しくてたまらなかった。


なんでだろう、私。どうしていまだに陸斗先輩を見るとこんな気持ちになっちゃうんだろう。


もう彼に未練はないし、むしろ今は嫌いなくらいなのに。


あの辛い失恋を思い出すからなのかな。


なんか今日は、嫌なことばっかりだな……。


ただでさえ落ち込んでいた気持ちが、ますます深いところへと落ちていく。


暗い気持ちを引きずったまま、私は図書室へと向かった。


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