「哀華、証、愛斗、愛華」


「來斗」「「父さん」」「父様」


……両家の当主の訃報を受け、日本に帰ってきた來斗。


訃報を受けた瞬間、來斗はニヤリと笑った。


父の死を悲しむこともなく、私も嘆くこともなく。


『よし、帰るか。2人が死んだなら、条件も無効だし』


……そんな一言で、済んでしまった。


尊いはずの、2つの、しかも父親が死んだのに。


非情かな?でも、泣けなかった。悲しくなかった。


帰って、一応、お参りして。


ヨーロッパに帰ろうかなーとか、來斗が言ってた時。


『戻ってこい!』


と、言う、要約するとこんな感じの周囲の熱心なる願いで家を継ぎ、今は立派な家元で。


「愛斗は粒あん派だろ?ほら」


わざわざ、追いかけてきて……恐らく、仕事からにげてきたんだろうけど。


「父様も一緒に食べよ?」


強請るように、愛華が來斗に寄る。


勿論……


「そうだな。じゃあ、隠れようか」


「フフッ、また追いかけられてるの?」


本当、愛華は來斗が目に入れても痛くないと可愛がっている娘。


証や愛斗のことも、愛してくれているけどね。


「哀華」


手を差し出されるので、それをとる。


ずっと、共に。


これからも……。


そう、死がふたりを分かつまで、


いや、


死がふたりを分かつても。


あなただけを、愛し抜く。