『私、幼い頃から、折檻される度に笑顔の來斗さんの写真を眺めていたんです。それを見ている限り、まだ、生きていけると思った。あの人のために、頑張ろうと思えたんです。例え、あの人に必要とされなくても、愛されなくてもいい。私に笑いかけてくれなくてもいいから、この広い空の下のどこかで、彼が笑って、幸せでいてくれるなら……それでいいから、それを思うと、私はなんでもできるんです』


「……夏咲の話だと、傷口には大量の塩を塗りこまれたらしい。勿論、お前の親が帰ったあとの話だがな。監禁まがいをして、幼い頃から、家畜扱いだったらしいし」


初耳すぎる情報と、


真っ直ぐな彼女の思いが、


俺の心をしばりつける。


「……それでも、お前は彼女に気をかけられないか?」


吊戯の言葉に、俺は首を横に振って。


「……行ってくる」


立ち上がった。