教室に入るまで、
恐らく20人くらいに功はおはようと
声をかけられる。

男子もいれば女子も。

最近では学校一のイケメンや、
超ハイスペックな、無気力王子なんて呼ばれてるものだから、その人気は計り知れない。


そんな事自覚してるのかしてないのか、功は避ける事もしずに笑顔を振りまく。
呑気に。


影で私が不安に思ってる事も知らずに。


「おっ梨乃ちゃんおはよ。」

「阿久津先輩!おはようございます!」


たまに先輩と登校が重なる事がある。
校門の前で。


「あ、先輩おはようございます。」


功も続いて挨拶する。
だいぶ先輩とも慣れて、懐くようになった。


「おう。
そういえば今日は久々の部活だよなぁ。」


「そうですね。先輩、ずっと気になってたんですけど、三宅先輩と一学年違うのに、仲良いですよね。」


そう。阿久津先輩は2年。三宅先輩は3年だ。

「ああ、従兄弟だからね。
何々?梨乃ちゃん俺と三宅に嫉妬ですか?」


「えっそんなんじゃないですよ。」


「え、本当なの梨乃?」


功が心底驚いた顔をする。
なんでこうなる?


「違うって。
先輩、功は冗談通じないんですよ?」


「悪い悪い。ま、そんな感じかな。」


従兄弟か…私には従兄弟がいないからなんか羨ましかったりする。


そして私たちは、それぞれの玄関で別れた。