小野田さんは出社すると、まず重役専用会議室に重役たちを集め、挨拶と来日した理由をはなした。その模様は日本本社内だけじゃなく、全国支社へも生配信されていた。

「我が本社(アメリカ)でもこちらのことは問題になってます。正直2年内に黒字経営に戻して頂かないと、切り捨てることになるでしょう!」

小野田さんの"我が本社"と言う言葉が、ここ(日本本社)が本社じゃないと改めて言われ、現状がとても厳しい状態だと重い知らされる。

小野田さんの話を傍聴していた。重役達は自分には関係無いとばかりに雑談し、笑い声をも漏らしていた。

既に怒りを覚える私は拳を握っていた。

なにこの人達、まるで他人事じゃない!?
ほんとに会社のこと考えてるの?

「えっと君は、小野田君と言ったかね?以前うちにいた事があるらしいね?とても優秀だったと聞いてる。そんな君なら大丈夫だろ?まぁヨロシク頼むよ?」

と、言う社長の言葉に私は自分の耳を疑い、更に拳に力が入る。

私はなんて会社に居たんだろ…

だが、私の拳の力を和らげたのは小野田さんの言葉だった。

「あんたらマジクズだな!?」

その小野田さんの一言で、ただ傍聴していた重役達は小野田さんへ敵意を露にした。

「なに!?」

「あなた達は何か勘違いされてませんか?私はアメリカ本社の人間です。こちらの会社に恩も無ければ、義理もない。はっきり言ってこの会社が潰れようが生きようがどちらでも良い。ただこの会社に一人でもこの会社を守ろうと思い頑張ろうと言う者が居るなら、私はその人の為になら協力します」

小野田さんはそう言った後、自ら集めたという、重役達の私利私欲の為の過剰な接待や取引先へのバックマージンの要求などの証拠を出し、重役達の総退陣を要求した。

そして「私の意は本社の意だ」と言った。