病棟を移って１週間もしないうちに手術の予定が空いたと聞かされ手術をする事が決まった。

手術の当日は母や兄夫婦、誠も、仕事を休んで来てくれた。

手術時間に近づき、看護師が迎えに来て不安がる私の手を誠は繋いで一緒に手術室までついてきてくれると言ってくれた。

私は病室に残る母達に「行ってくるね？」と笑顔で言って誠と繋がる手をにぎりしめた。
すると誠も大丈夫と言うように握り返してくれた。

この温もりを、また感じられるだろうか…

手術室のある5階に到着すると看護師に「付き添いの方はここまでです」と言われた。

「誠…」

「大丈夫や、眠ってる間に全て(みんな)終っとるさかい心配せんでいい。ほな、後で会おうな？」と誠はキスをしてくれる。

「時間です！」と言う看護師に誠は「人の恋路を邪魔する人を京都では、いけずなおひとやとゆぅですよ！」と言った。
ムッとする看護師を見て私達は笑った。

「プッフフフ…じゃ、誠言ってくるわ！」

誠のお陰でちょっと気が楽になった。誠ありがとう。

「ちゃんと待ってるさかいな？」と手術室へ入る私を最後迄見ててくれた。

手術室の分厚い扉の奥はなんとも言えない空気感がある。
手術台に寝かされ、名前、手術内容の確認を私と数名の医師と看護師で行う。そして麻酔科の医師だろう、左手に点滴の針を刺し「ゆっくり数を数えて下さい」という。

1…2…3…4…5…6…7…

次第に瞼が重くなる…