「梨華…お願い。少しだけでも良いの食べて?」

「ごめん。食べたくない」

「じゃ、気分転換に1階の梨華が好きなカフェ行かない?ほらっ!なんだっけシナモン味の…あっそうそうシナモンロール!梨華好きだったじゃない?」

私は首を振り行かないと言う。

「じゃ、お兄ちゃんのビーフシチュは?梨華好きでしょ?」

私は夢を失って以来なにも口にしていない。

「ちゃんと食べないといつまでも点滴外れないわよ?家にも帰れないでしょ!」

病院にいる間は数日くらいなら、幸か不幸か食べなくても点滴で生きていられる。
この先私に楽しいことや幸せなど有るの?

夢も生き甲斐も私にはもう無い。

「お母さん…プリン食べたい!」

「プリン!?分かったわ明日作って貰って、持ってきてあげる」

「ううん。今食べたいの地下のコンビニで買ってきて!」

「プリン!?分かったわプリンがいいのね?」

母は私がやっと食べてくれると喜んで地下のコンビニへと向かった。

お母さんごめんね…

点滴スタンドを引きずり、部屋を出てナースステーションの前を通っても、夕食時間で看護師も忙しい様で、私には誰も気付かなかった。

非常階段へ繋がるドアを開け、上へと階段を上がる。