「ちょうど今から出るところだったんです。お昼、外で食べてから行きますので、現地集合でもいいですか?」

そう言いわけして逃げ出そうとすると。

「俺も食事まだだから、一緒に外で食べようか。急いで支度するから、待っていて」

強引に押し切られてしまって、私の目論見はあっさりと砕け散った。 

結局、ふたり仲よく並んで会社を出ることになってしまい……。

「今日の打ち合わせは、出来れば、契約金額をもう少し上げる方向で話を進めたいんだ。このクライアントは保守問い合わせがすごく多いから、サポート的な名目で別途オプション費用を計上するとか、あるいは――」

逢沢さんは、あえて昨日の話題に触れないようにしているのか、当たり障りのない世間話や、この後の仕事の話なんかで間を繋ぐ。

いつも通りすぎる態度に、むしろ怖いくらいだ。

夕べ、神崎さんと姿を消してしまったことについて、どう思っているのだろう。

話を切り出すのは怖いけれど、このままでは居心地の悪さが長引くだけだし……。