イタリアンレストランを後にしてビルを出ると、
「すみません、お支払いを全部任せちゃって」

わたしは高崎さんに言った。

先ほどのお代は彼が全部出してくれたのだ。

わたしも少しだけだそうとしたんだけど、
「いいんですよ、素敵な時間を過ごせましたから」

高崎さんはそう言って断ったのだった。

「駅まで送りますね」

そう言った高崎さんに、
「本当にありがとうございます」

わたしはお礼を言った。

この時間がずっと続けばいいのに…。

駅までの道のりを歩いている間、わたしはそんなことを思っていた。

このまま駅に到着したら、高崎さんと離れてしまう。

もっと一緒にいたい、彼のことをもっと知りたいと思ったわたしはわがままだろうか?