「はい、お先に行ってきまーす」

真田さんに返事をすると、あたしは受付から離れた。

休憩時間は10分だ。

階段をのぼって2階の自販機へと向かいながら、
「んーっ、座るのも楽じゃないなあ」

あたしは軽く躰を動かした。

その時だった。

「あっ、危ない!」

「えっ?」

その声に視線を向けると、上から何かが落ちてきた。

「おおおっ…!」

パシッと落ちてきたそれを手で受け止めると、ファイルだった。

「ナイスキャッチ!

君、反射神経がいいんだね!」

その声と共に、早足で階段を降りる音が聞こえた。

学生時代はハンドボール部に所属していたのだ。

引退してから時間は経っているけど、まだ体力は衰えていないんだな。

「いえ、そんなとんでもな…」

近づいてきたその人の顔を見たあたしは驚いた。