由真ちゃんが勤務している商業ビルが近づいてきた。

今のところ、誰もわたしのことには気づいていないみたいだ。

そのことにホッと胸をなで下ろしていたら、
「おはよう、由真ちゃん」

「ひゃっ！？」

突然誰かに声をかけられたので驚いて声をあげてしまった。

後ろを振り返って確認をすると、かわいい顔をした女の子が何があったのかと聞きたそうに首を傾げていた。

「ど、どうしたの？」

彼女は大きな目をさらに大きくさせていた。

えーっと、確かこの人は…？

由真ちゃんから教えてもらった情報を頭の中に思い浮かべて、その中で一致する顔を探した。

「お…おはようございます、森坂さん」

あいさつをしたわたしに、
「おはよう、由真ちゃん」

彼女――森坂さんは笑顔を見せてあいさつを返してくれた。