顔を上げて准一さんの方を見ると、見たこともないくらい悲しい顔をしていた。

なんでそんな顔するの…

自分からあんなことしておいてそんな顔するなんて反則じゃない?

許さざるを得ないじゃない…


「……学校であれは、ないです」

「だからごめんてば」


ぎゅうっと掴まれた腕に力が込められた。


「…もうしないなら、許す」

「………わかった」


だって私たち…義兄妹でしょ?

私がそう言うとフッと微笑んで腕を掴んでいたその手は優しく私の頭を撫でる。

本当に調子狂う。

結局私が折れてしまった。


エレベーターに乗り込むと、准一さんは壁に背中を預けてネクタイを緩める。

相当お疲れのようだ。

それにしても…ネクタイから覗く鎖骨がなんとも言えぬ…

って私はさっきあんな話をした後で何処を見ているんだ。





「「ただいまー」」


2人で“ただいま”と家の玄関の扉を開けたのは初めてかもしれない。

そんな些細なことなのに、相手が准一さんだったからなのかそれともこの気持ちはなんというのかわからないが… 嬉しいことには変わりない。

気づかれないよう顔を綻ばせた。