「この3日間の間でマキが俺のこと好きになってくれないかなぁとか考えたけど…やっぱ無理だったか」

「…ごめんなさい」

「謝んなくていいよ。脅して付き合わせたの俺だし。最低だよな…」


語尾に行くに連れて声のボリュームが下がった。

私は俯いて膝を抱え込んだ。

凪君の気持ちは嬉しかった。

それでも私は准一さんが好きで、理事長とか義兄さんとか関係なく一人の男の人として好きなんだ。

だから応えられない。


「大丈夫、約束はちゃんと守るよ。マキと理事長のことは言わない」

「…ありがとう。ごめんね」

「謝んないでよ。俺めっちゃ惨めじゃん。2度も振られてんだから」


そう言って笑いながら私の頭をガシガシと撫でて起き上がる。


「理事長も相当マキのこと好きみたいだし。俺勝ち目ないわ」

「え…?」

「うん、まぁそれだけ。これからはまた“オトモダチ”でよろしく」


顔を両手で覆いながらそんなことを言う。

私はまた泣きそうになってしまった。

凪君、ごめんなさい。

好きになってくれてありがとう。


一人にして欲しい、と言われて私はその場から駆け出した。



「チクショー…。好きだったなぁ」


日の沈みかけた芝生で一人、凪君が涙を流しながら呟やいた言葉は私の耳には届かなかった。