「マキは…理事長のどこが好きなの?」

「……全部。こんなに惹かれるなんて思わなかった」


少し俺様で強引で、それでも私を優しく包んでくれる人。

細かいところを上げればキリが無い。


「理事長っていくつだっけ」

「23歳。私達とは7つ離れてるね」

「そんな年上なんだ」


ただ前を見ながらお互い会話をする。

子供達の声、カラスの鳴き声、自転車の通る音、どこかの親子の会話やたらと耳に入るほど静かな私達。

その後も凪君からの一言一言、准一さんに関する質問は終わらない。


「じゃ、これが最後。マキは───理事長が好き?」


私の方を見て、目を見つめて聞く凪君。

正直に答えていいものなのだろうか、言ったらどうにかなってしまうんじゃないか。

でも…私は准一さんが好きな気持ちで正直にいたいから。


「…好き。あの人が好きなの」


こんなに惹かれてる。

今すぐ会って抱きしめて欲しい、あの全てを奪ってしまうようなキスをして欲しい。


「……泣くほど好きなんだ」

「…え」


そっと私の頬に指を滑らせそれを見せる。

凪君の指には微かな水滴が付いていて、気づかないうちに涙が頬を伝っていたようだ。

そして凪君はゴロンと芝生に寝そべると「あーあー」と声を出した。