放課後、職員室から出てきた彼の肩を叩いた。
振り向いて目を見開く。
「ちょっと、君と話がしたいんだ」
彼───…霧島 凪は、少し怪訝な顔をすると俺の言いたいことを理解したようだ。
わかりました、と言って俺の後に続いて理事長室に足を踏み入れた。
座って、と応接間に通す。
誰もいない、2人だけの空間は少しピリピリしている。
俺は前もって入れておいたお茶を彼の前に差し出した。
「話ってなんですか」
「それは君が一番よくわかっているはずだ」
余裕の態度でそう言えば、睨まれた。
イマドキの高校生というものはこういうものなのだろうか。
「理事長なんかが俺みたいな一生徒を呼び出すってことは、相当気に掛けてることですよね?」
「そうだね。人のものを横から奪うのはどうかと思うけど?」
「……やっぱり、マキか」
偉そうにソファーの背凭れに体を凭れさせながら言う。
一言で言えば、態度が悪い。


