そう言うと、ビックリしたように目を見開いて俺を見る。


「え…?」

「気づかないとでも思った?様子がおかしい」

「そんなことないよ」

「味噌汁に醤油を注ぎ足し、苦手なマヨネーズを野菜炒めに掛けるのがおかしくないと?」

「………」


どうやら自覚はあったらしい。

味覚までおかしくなったのかと思った。


「黙ったままじゃわかんないよ」

「なんも…ない。ただテンションが上がらないだけ」

「……そ。マキが言いたくないなら俺もこれ以上聞かないよ」


自分で探ってやるから。

ポンポンと頭を撫でて車を発進させた。

玄関近くまでマキを送り届けて職員用の裏玄関がある駐車場へと向かう。

車を止めて荷物を取り出しながら、ふと反対側の助手席の扉前に人影があるのに気づいた。


顔を上げると、そこには見知った顔。

俺に向かってペコリと頭を下げた。

さすがにここで話すのはマズそうだから、と中庭の影へとその人物と移動したのだった。