「マキ…?」
「ううん、なんでもないの」
表面上笑ってるけど、内心泣きたくて仕方なかった。
でもせっかくのデートをぶち壊しにするようなことは絶対にしない。
半分くらいの高さになった頃、准一さんが何を思ったのか……私の隣へと腰掛けてきた。
「ど、どうしたの?」
「ん?隣で一緒にみたいな、と思って」
綺麗なものって心が洗われるよね、って付け加えて。
隣にいる准一さんに心臓がドクンドクンと高鳴り始める。
近い、近すぎる。
聞こえちゃうんじゃないかな、って心配になって胸元で両手を握りしめた。
「ねぇマキ…」
「な、何…?」
一人葛藤していると准一さんはポツリポツリと呟き始めた。
「俺さ、こう見えても飽き性で物事にあんまり執着心がないんだよね」
「うん…」
「だから中学や高校、大学の時の彼女とか名前も忘れるくらい付き合ってって言われれば付き合って、すぐ別れる繰り返しだった」
「…そ、そうなん、だ 」
初めて聞く准一さんの恋愛事情。
耳を傾けたくはないけど、聞かざるを得ない。


