観覧車の中、向かい合うようにして座っている私と准一さん。
乗り込んでからというものまだ一言も言葉を交わしていない。
ただお互い外を眺めて街中の夜景を楽しむ。
空の星が見えないほどの光を放つ地上の人工の光。
キラキラと輝くそれに私は釘付けだった。
ジッと窓にへばり付いて外を眺めていると、ふいにクスッと笑い声が聞こえた。
准一さんが長い脚を組んで片手で頬杖を付きながら私を見つめている。
「楽しい?」
「楽しいしとっても綺麗。准一さんは楽しくない…?」
男の人ってあまり、こういう夜景とかに感動を覚えない人が多いって聞くけど、准一さんもそっちの人かな。
不安気に見つめると、准一さんは首を左右に振って口元に弧を描く。
「マキが楽しそうだから、俺も楽しいよ」
平気でそんなこと言って退けてしまうんだからズルい。
恥ずかしくなって視線を逸らした。
暗い観覧車の中頬を赤らめる私。
でも…──────
准一さんは今までもそうやってきてるんだ。
私が相手だからっていう話じゃないんだ。
少し悲しくなって眉を下げて微笑み返すと准一さんがピタリと固まった。


