俺としたことが、不覚だった。

あまりに気を抜きすぎていたためか、思わず本音を言うようなことを。


「別に悪いとは言わないよ。でも生徒…ねぇ~」

「先輩だから信じてお話しますけど…。問題はそれだけじゃないんですよ」


この際、正直に全部話してスッキリしてしまった方がどうやらよさそうだ。

どうせ後からバレてしまうよりは自分で言ってしまった方がいい。


「相手の子。父が再婚した相手の連れ子さんなんです。それでうちに入ってきた1年生」

「は?お前マジで言ってる?」


先輩の食事していた手が止まる。

俺もグラスに入っていた水を一気に飲み干してテーブルに戻した。


「それはまた……災難だな」

「でもどうしようもないんですよね。最初は絶対そんな風にならないって思ってたんですけど…」


はぁ…と重いため息をついた俺に、伊緒先輩は持っていたお箸を皿に置いた。


「お前が話してくれたから、俺も話すよ。俺もこないだまである生徒のことが好きだった」

「伊緒先輩まで…」


思わず耳を塞ぎたくなってしまったのは、尊敬していた伊緒先輩だったからなのか。