「ち、違うの…っ嫌だったわけじゃなくて…その」


言葉が上手く出てこない。

言いたいけど、言えない。

不純な動機かもしれないけど、私は准一さんが好きだから決して嫌なわけではない。

ただ…私以外にもこういうことをしているんじゃないか、という不安が過ったのだ。

途切れ途切れに紡ぐ私の言葉に不安そうに耳を傾ける。


「泣いたりして…ごめんなさっ…」

「マキを責めてるわけじゃない。俺が悪かったんだ」


ごつんと額同士がぶつかって、准一さんが目を伏せる。

そして私を抱きしめて大きく息を吐いたのだった。


「ごめん…俺イカれてるね」

「……っ」


聞けない自分が嫌だ。

どうして一言「恋人はいないの?」とか言えないんだろうか。

聞いてしまえば楽になれるのに。

だからと言って遊ばれている自分に気づくのも怖い。

ああ…矛盾している。


「マキを泣かせることはしたくない」

「…さっきのは…ちょっと色々と考えちゃって」


准一さんにされるのが嫌なわけじゃない。

なんて考えてしまう私も相当イカれてる。


好きな人に触れられたいと思うことは自然なことだと思うから…───

私の一方的な片想い。


鼻を啜りふと見上げると、眉をハの字にして微笑む准一さんが私を見下ろしていて…


「帰ろうか」と頭を撫でながらそう言ったのだった。