「………泣いた?」

「え?」

「誰に泣かされた?」


目を細めてぐっと近づいた顔。

何処か怒っているようにも見える准一さんの瞳に蛇に睨まれたカエルのように固まってしまった。

もしかして、心配してくれてる?


「違うの、あの嬉し泣きしちゃって…」

「嬉し泣き…?」


そっと私の頬を撫でて涙の乾いた跡を指でなぞる准一さんにビクッと体が揺れた。


「准一さん、あのね?ゆきのが西野君と付き合い始めたんだよ。それで嬉し泣きしちゃったの」

「…ふーん。良かったじゃん」


誰かに泣かされたのかと思った、と言って手を離される。


「だから誰かに何かされたわけじゃ、ないよ」

「マキを泣かしていいのは俺だけだからねー」


え?

と顔を上げたと同時にエレベーターの扉が開いて准一さんは私にそっと手を差し出す。

首を傾げながら手を乗せるとギュッと握られた。

本当に良かった、なんて思ってるかなんて知らないけど私はその手に引かれながら部屋へと入るのだった。

……ヘンなの。