『御門っ……やっぱり、夏姫が生まれ、たんだしっ……んぁ、やぁ……』


『黙って』


『んんっ……はぁっ……』


私の言葉は、キスの淡いに溶ける。


『俺は家よりも、地位よりも、家族よりも、お前が大事。だから、良いんだよ。お前を悲しませるものには、近づかない』


『っ、だからって……んっ、くぅ……っっ』


『夏咲は笑ってて。大丈夫。例え、世界を敵に回しても、夏咲と夏姫のことは絶対に守るから』


御門の気持ちは嬉しいよ。


けど、結局……夏姫のことも、結婚のことも、私たちは彼らに言えてない。


彼らが御門を大事にしていることを知っているからこそ、私は御門に家族と話し合って欲しいのに。


たとえそれで、御門がいなくなっても……私は幸せな夜と、


『愛してる』


……あの一言だけで生きていけるから。


でも、御門は聞いてくれない。


私が御両親のことを口にすると、優しく、時に激しく、私を抱いて誤魔化すんだ。


例え、横に夏姫がいても。


『声、抑えろよ』


そう言って、触れてくる。


彼の元に残ると決めた時の、あの優しい彼はいない。


いや、まだ、いるにはいる。


そうじゃなくて……御門の愛は重いんだ。


私を失うかもしれないという不安が、彼を駆り立ててる。


私を奪うかもしれない家族に、殺気立ってる。


私はそんなに、弱くないのに。