「麗(うらら)姉ちゃん。お仕事、無理してない?」


殺風景な病室で……その日も弟の健(たける)は、心配そうな目を向けて私を気遣ってくれていた。


「いいえ、私は全然大丈夫だから。健はいい子に……ゆっくり休んどくのよ」

「うん! 僕、絶対に早く良くなる!」


そんな健がいじらしくて、私はにっこりと笑った。



健は七歳で、本当は小学校に行きたい……友達が沢山いる年齢のはずだった。

しかし、彼は三年前、心臓を患っていることが発覚した。

外で友達と遊んで、またあの発作が起こってしまったら……心臓の発作が起こってしまったら、命が危ぶまれる。

本当はすぐにでも手術を受けさせてやらなければいけなかった。

だが、今は……両親も身寄りもない私にはそんなお金はどこにもなかった。

だから、私は風俗の仕事に出る……そんな選択肢を余儀なくされたのだ。



それも毎日、朝から出勤した。

健には自分の姉が、自らのために体を売っているなんてことは悟られたくなかった。

だから、彼には、ちゃんとした会社のOLとして、きちんと朝から働いていると嘘を吐いていたのだ。


健は子供心にも、そんな私を悲しませないために……そのような不幸な状況でも泣き言一つ言わず、健気に病気と闘っていたのだ。


「じゃあね、健。もう少しの辛抱……本当にもう少しで、手術を受けて。みんなと小学校に行けるようになるからね」


私は彼に柔らかく微笑んで病室を出た。



三年間、貯めたお金をかき集めたら、本当にもう少しで手術費用に届くところまできていた。

彼さえ元気になってくれたら……私は風俗からスッパリと足を洗うつもりでいたのだ。