いつも通りの朝……

廊下には、変わり映えのしない私の怒鳴り声が響き渡る。


「こぉら、ジョン! 私の肌着、返しなさい!」

「ははっ、うらら。こっちだよー!」

「こっちだよー……じゃない! 寒いでしょうが! 待ちなさい!」


最近はずっとこんな調子で、朝は私の衣類を奪ったジョンとの追いかけっこで始まる。

そしてここ、パンターにも冬のような季節があるらしく……

「うー、寒! ……ったく、あんのクソガキ!」

そう。朝はもう、身震いするほどに寒いのだ。

だから、毎日のように私の服を取って意地悪するこのガキ……本当に、困る!



やっと廊下の端に追い詰めてやって……私は両手を広げた。


「ここまでよ、ジョン。観念なさい!」


しかし、振り返ったジョンはニヤッと笑った。


「まだまだだよ! そら!」

「あっ!」


左腕の下を器用にすり抜けられて、私は慌ててターンした。


「こぉら、返しなさいってば……わっ!」


ターンした拍子に、私は廊下の床に滑ってつるんと倒れそうになった。

すると、温かくて優しい手がそっと私を受け止めてくれた。


「大丈夫ですか、うらら?」


聞き慣れた静かな声……顔を上げると、愛しい彼の微笑みが目に映った。


「レオパード……」


彼の手から伝わる温もりに、私の心はぎゅっとつかまれて……

すると、さっきまで悪戯っぽく笑っていたジョンは、途端に膨れっ面になった。


「もういい! 返す!」


ジョンは乱暴に、私の服を投げ捨てた。


「こぉら、ごめんなさいは?」


ジョンは私の剣幕にも動じず、ベッと舌を出して子供部屋に戻った。

私の口から、はぁっと溜息が出た。


「全く、ジョンのやんちゃっぷりも、困ったもんよね」


私がぶうぶう文句を言うと、レオパードはクスッと笑った。


「ジョンがやんちゃなのは、プリンセスに対してだけでしょうね。私やオルビに対しては、とてもいい子ですよ」

「全くもう……本当、嫌んなっちゃう」


その理由は私も気付いてはいるんだけど……でも毎朝毎朝、寒い目にあうのは腹が立つ。

私はイライラしながら肌着を着た。