「ナミプリンセス。相変わらず、恐ろしいですね」


家臣達が立ち去った後……奈美のもとに、ある男がやって来た。


「しかし、相変わらず美しくもある」


彼は口元に白い歯を浮かべて見せて、その右手をそっと奈美の胸元に忍ばせた。

奈美はそんな彼を誘惑するような笑みを浮かべる。


「あら、コヨテプリンス。私は気の小さいあなたのできないことをやって差し上げているまでよ。でも……あなたがあの時。私をこの世界に連れて来てくれたこと、本当に感謝しておりますわ」


彼女はその唇をそっとコヨテの唇に重ねた。


「だって、私……この世界でやるべきことを忘れておりましたもの。そう。三種の宝玉を揃えて、全ての世界を支配するという使命を」

「ふふ。悪い女性だ。あなたがこの世界を支配されたら、この世界がどうなるか。恐……いや。楽しみです」


プリンスはそっと、彼女を抱き寄せて……彼女は彼の腕の中、悪魔のような笑みを浮かべた。


「本当に嬉しいわ。そう。あなたと再会できたことも……」

「本当に。アルビンのうららを仕留めるために行方不明になられた時には、どうしようかと思いましたよ。まさか、『奈美』様として転生されていたとは……」

「全てを思い出した私は、無敵ですわよ」


そう……前世の記憶を取り戻した彼女は、無敵のウルフのプリンセスで。

眠る狼を内に秘めた美少女は、恐ろしいほどの野望を胸にほくそ笑んだ。