「何をやってんのよ! さっさと奪ってきて、この私によこしなさい!
……ったく、役立たずね」

「はっ……申し訳ございません」

「罰として……」


奈美の顔が歪にゆがんだ瞬間……家臣の顔からは血の気が引いた。


彼女は鞭……硝子やら鉛やらの破片が無数にくっついているそれを手に持った。


「な……ナミプリンセス。どうか、どうか、お許し下さい……!」


涙目で許しを乞うウルフの家臣……しかし、奈美は容赦しない。

鞭を振り上げて、思い切りそいつを打った。


「ぎゃあああ!」


その家臣の凄まじいほどの悲鳴が響き渡った。


誰がどう見ても理不尽な処罰……しかし、奈美の口元には歪んだ笑みが浮かんでいた。

ウルフ達を服従させ、傷めつける。

そのことに彼女は、言い様のない快感と興奮を覚えていたのだ。


それは、友として麗を気遣っていた彼女の内に隠された本性であった。




血まみれでぐったりと横たわる家臣を前に、奈美は悪魔のような笑みを浮かべた。


「あなた達! あと、一週間だけ待ってあげましょう。それまでに、アルビンとパンター、二つの宝玉を手に入れないと……。分かっているでしょうね?」

「はっ! 必ずや、二国を滅ぼし奪って参ります!」


ウルフの家臣達は彼女の恐ろしさにガクガクと震えながら、その場を立ち去った。