「うらら、どうかしましたか?」


溜息を吐いていた私を、レオパードが不思議な顔で見つめた。


「いや、ちょっとね。元の世界のことを思い出して……」

「そうか……」


レオパードは察したように頷いた。


「うららは私が……あの世界から無理に連れて来てしまいましたからね。転生していたなら、あの世界での生活もあっただろうに……本当に、すまないことをした」

「いえ、そんなことはないわ。レオパードは私が転生していたって知らなかったんだし、きっと、ここでプリンセスとしてあなたを支えるのが私の使命だったんだと今では思ってる。だけど……」


私は少し、俯いた。


「私には弟がいたのよ」

「弟?」

「そう……」


私は、あたふたと手を焼いているオルビを他所にエマとお菓子の取り合いっこをしているジョンを見た。


「ジョンより少し大きくて、そして……」


あの時のことを思い出すと、私の目にはジワっと涙が込み上げた。


「丁度、ジョンくらいの頃に病気に倒れた……」


脳内にはっきりと蘇って……私はレオパードに初めて話し始めた。

あの日……高校三年生の夏休みの日のこと。

突然に健が、まるで電池が切れたかのように動かなくなって。

怖くて、怖くて……自分にあの忌まわしい傷をつけられた日の何倍も泣き明かした日のこと……。