暫くは茫然として私と目を合わせていたレオパードは、思わず吹き出した。


「うららプリンセスの美貌はこの世界の誰もを虜にするね。まさに、魔性の……」

「あぁもう、いいから、いいから。それより、朝食よ。私、朝っぱらから走って、お腹空いたんだからね」


私は顔を火照らせたまま、床に落ちていたスカートを拾った。



あの日……私の前世のことが明らかになった日から。

その凄惨な前世がまるで嘘のように、穏やかで平和な日々が続いていた。

ジョンとエマの兄妹はまるで、私とレオパードの間にできた子供みたいに思えるほどで。

レオパードはジョンが幼いながらも弓や剣なんかを教えていたし、私はエマと一緒にお花を摘んだりお菓子を作ったりして過ごしていた。

それは寧ろ、元の世界……私が体を売って過ごしていた生活よりも幸せなもので。

けれども私の頭からは、この世でただ一人の弟……健のことが離れることがなかった。



(健……どうしてるだろ?
体、大丈夫かな?
こんなことなら……貯まっていただけのお金で無理してでも、手術を受けさせてやれば良かった)


私の頭には、そんな後悔の波が押し寄せて……好きな朝食のフルーツにも手をつけられず、ハァーッと深く溜息をついた。