私は朧げながら思い出した。

パンターに嫁いで、この人……レオパードの妻になって。

それまでの凍りついたような心が嘘のように、温かく、柔らかくなって……

何もかもが色付いて薔薇色に見えた、束の間の日々。



それはとっても幸せで、私はまるで、純粋な子供に戻ったかのように毎日をときめきながら過ごした。

レオパードと共に訪れたパンターのお花畑で色とりどりのお花を摘んだり、小さな動物達と戯れたり。

そう……あんなに傷付き、哀しみを背負っていたのが嘘のように。


そんな、私の心の奥底に眠っていた記憶がぼんやりとでも蘇り、私の目からは思わず涙が溢れ出た。


「レオパード……」


私はそっと立ち上がり、彼をギュッと抱きしめた。

その体から伝わる温もりは懐かしくて、やっぱり心地よくて……。

心の中の冷たい氷をも溶かしてくれるようだった。


私はそっと目を閉じて、唇を彼の唇に重ねた。

彼は何も言うことはなく……ただ、私を優しく受け入れてくれた。


だから……私には分かった。

私が何者であっても、前世がどうであっても……私の中にどれほど恐ろしい者が潜んでいようとも。

彼は私の全てを包み込んでくれる……生涯にただ一人の愛しい夫なんだ。